欧米では常識?なぜ海外ではFPが人気なのか?日本の状況と合わせて解説

日本では少しずつ知名度が上がりつつも、需要が高いとは決して言えないFPですが、実は欧米諸国では大人気といえるほど、FPの需要は高い傾向にあります。

特にアメリカの投資家はFPの利用率が高く、「INVESTMENT COMPANY INSTITUTE」による2015年の調査では、米国投資家の80%がFPを利用しているとのことでした。

日本では類似の調査は行われていませんが、欧米に比べて独立開業しているFPが圧倒的に少ないことからも、まだ需要が少なく、利用率が低いことはうかがえるでしょう。

欧米と日本では、なぜこれほどまでにFPの人気に差があるのか。当記事ではその理由を「金融教育に対する意識の差」から紐解いていきます。

目次

金融教育に対する意識の差がFP人気に直結?

「欧米諸国に比べ、日本は投資をしない」「資産運用といえば、利息がほぼ付かないと分かっていながらも銀行口座に預金するだけという人も多い」というのは、ずいぶん前から言われていることです。このような資産運用の消極的さが、日本のFP需要の低さにつながるというのも、よく聞きます。

ではなぜ「日本人は資産運用に消極的であり、欧米は積極的なのか」というと、金融教育に対する意識の差によるところが大きいでしょう。

世界的に見ても遅れが大きい日本の金融教育

日本では「お金を稼ぐことについて公言することはNG、恥ずかしいことである」といった風習があります。そのような国民性もあり、日本は家庭でも学校でも十分な金融教育が施されないまま、現代に至りました。結果、欧米諸国と比べ、金融教育の遅れが非常に大きく、昨今では問題視されています。

高齢社会が長く続く中で投資の必要性が見直されている現代ではありますが、日本で金融教育が義務化されたのは2022年4月と最近のこと。まだまだ多くの日本人は資産運用に関する知識が薄く、「自分には縁遠いもの」「リスクが高く怖いもの」と捉えているのが一般的でしょう。

幼少期から資産運用を学ぶ欧米諸国の金融教育

1980年代に実施された「預金金利自由化」などを皮切りに、欧米諸国の中でもアメリカは早いうちから金融教育を重要視してきました。特に「2000年の目標 米国教育法」が1994年に制定されてからのアメリカは金融教育に関する推進が著しく、国家戦略として国を挙げた金融教育に取り組んできています。

実際の教育内容としては州によって異なりますが、小学生という幼いころからお金の使い方だけでなく投資方法をはじめとした稼ぎ方まで学ぶ子どもたちが、アメリカではポピュラーです。

またゲームを媒体とした無償教材も多く、子どもたちが自然と楽しく資産運用について学べる環境を整えることにもアメリカでは力を入れています。

金融教育の発祥とされるイギリスでは、金融教育の開始が3歳からと非常に早く、11歳の時点ではすでに外貨通貨や債務・借入などについても学べるように体制を調整しています。

そのほかドイツやフランスなども含め欧米諸国では、幼いころからお金に関しては使う知識だけでなく、運用する方法まで専門的に学ぶのが一般的です。

日本と欧米の投資者の割合について

「金融教育に対する意識の差がFP人気に直結?」の項目でお話したとおり、欧米諸国に比べて日本は金融教育が遅れていることが、資産運用に対する消極的さにつながっていると考えられるでしょう。そこでここからは、消極的さによりどのような影響が出て、FPの人気や知名度にこれほどの差がついているのかを解説します。

まずは日本と欧米の投資者の割合について解説しますが、これは「日本銀行調査統計局」が2022年8月に発表した「資金循環の日米欧比較」を基に見ていきましょう。こちらは家計の金融資産構成をまとめた表です。

  家計の金融資産構成(そのほかを除く)
日本 現金、預金…54.3%
保険、年金、定型保証…26.9%
株式など…10.2%
投資信託…4.5%
債務証券…1.3%
アメリカ 株式など…39.8%
保険、年金、定型保証…28.6%
現金、預金…13.7%
投資信託…12.6%
債務証券…2.6%
そのほか欧米諸国

現金、預金…34.5%
保険、年金、定型保証…31.9%
株式など…19.5%
投資信託…10.4%
債務証券…1.6%

※そのほか欧米諸国については、ユーロ圏から算出

日本は投資にかける割合が合計16%しかありません。これに対し、アメリカでは合計55%、そのほか欧米諸国では合計31.5%です。(※今回は、保険や年金などは投資に含まず計算)「日本人は資産運用に消極的」というのがよく分かる数値でしょう。

FPは資産運用に関わらず、ライフプランすべてに関してアドバイスをもらうために利用するものですが、欧米諸国では、FPの中でも特に資産運用を具体的に提案してもらえる「FA」の需要が高い傾向にあります。

つまり多くの国民が投資をはじめとした資産運用に積極的であることは、FP人気に直結するといえるでしょう。

出典:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」p.2

日本と欧米の投資スタイルの違いについて

資産運用に対する積極性は、投資スタイルにも影響を及ぼします。日本では一部の投資家は株式などを自分で選択し、運用していますが、多くの一般人は投資信託を用い、選択や運用をほぼ任せきりにします。

これに対し、欧米諸国では株式による資産運用が活発です。中でもアメリカはこのような傾向が顕著であり、さまざまな投資先に興味を持ちやすいといいます。

しかしアメリカであっても一般国民が投資に関して、多用な知識を持ち合わせているかというと、そうではありません。多くの投資者は、FPに資産運用方法を相談し、その指示に従うのだといいます。

このように選択や運用に関して任せきりというのは、日本でもアメリカでも大きく変わりません。任せる相手が投資信託会社なのか、FPという個人であるのかといった違いです。

ただしFPは個人のライフプランに合わせて資産運用方法をアドバイスしてくれるのが、大きなポイントです。任せきりという状況であっても自分の状況や手持ちの資産を最大限活かすことが可能なのは、FPだといえるでしょう。

とはいえ日本では資産運用に消極的な人の割合が多く、それに伴いFPの需要が伸び悩み、独立しづらいといった状況があります。結果として「FPを利用しよう」という意識を持ちにくい、利用しようと思っても「近くに需要をかなえてくれるFPがいない」といったケースも、日本では多いでしょう。

未来のために今、大人は子どもたちにも金融教育を

欧米諸国と日本におけるFP人気の差は、国民の金融教育に対する意識の差に比例しています。欧米諸国からここまで遅れを取っている原因は、「お金の話を大っぴらにするのはタブー」といった国民性によるところも大きく、すぐに変革できるものではないでしょう。

しかし少子高齢社会の現代において、自分の生活を守るために金融リテラシーを身に着けることは必須です。自分はもちろんのこと、お子さまのいるご家庭では、ぜひ幼いうちからの金融教育を意識してみてください。

関連記事

目次